
長時間バスや車に乗っていたり、長いフライトで便通に良くない食べ物を摂取すると、一時的に便秘なったことがあるかと思います。また旅行に行くといつもと違う生活リズムになり、便通が悪くなってしまう経験をされたことがある人も多いと思います。これは通常の生活に戻ると便通も普通に戻りますが、慢性の便秘で悩まれている方が非常に多いと言われています。実際、米国国立衛生研究所によると、便秘は米国で最も多い消化器系の問題の一つであり、約4200万人に影響を与えています。日本でも「自分は便秘だと感じている人」の割合が、2019年の「国民生活基礎調査」において 3.5 %(約430万人) と記載されています。
規則正しい生活にもどし、食事も食物繊維を摂取して水分補給もしているのに、慢性の便秘が治らないという方はいませんか?もしかしたら、それは肝臓に原因があるかもしれません。
肝臓は解毒の中心であり、代謝や循環など他の多くの生理的プロセスの制御を担っています。また肝臓は消化器系の健全性を維持する責任を負っていて、特に胆汁生成において重要な役割を果たします。
- 胆汁は脂肪の分解と吸収に不可欠で、体内の化学処理工場として機能し、血液循環を調節してくれます。
- 肝臓は胆汁酸(例:ケノデオキシコール酸、デオキシコール酸)を生成し、脂肪の消化を助けるために腸へ分泌されます。
- 胆汁酸は蠕動運動(食べ物を先へ先へと送り出す腸の動き)を刺激し、便を柔らかくしてくれます。
- 胆汁は食物中の脂肪やビタミンの消化・吸収を助けます。
ということは肝臓が正しく機能しなくなると、胆汁を生成して腸内に放出できなくなり、胆汁不足で便が硬くなって、便秘を引き起こすというわけです。
さらに腸と肝臓は腸肝軸と呼ばれるシステムを通じて相互に作用していて、このつながりは全身の健康維持に不可欠です。肝臓は腸から吸収された物質を処理し、その健康状態は腸内細菌叢の構成と機能に大きく影響します。なので肝疾患のある人は腸内細菌叢の変化(ディスバイオシス)を引き起こす可能性があります。また肝機能障害は腸管バリアを弱め、不要な侵入者(有害物質)が体内に入り込んでしまう、腸管透過性亢進を発生させます。腸は第2の脳と言われるので、気分の変動、不安や抑うつ、また集中力の低下などという精神的な問題も発生していきます。
このように肝臓の働きは腸と深くかかわっているので、自分の体調に目を向けてみてください。便秘だけでなく、疲れがとれない、頭痛がよるある、気分が変動することが多かったり、物事を覚えたり、仕事に集中するのが困難になっているという症状があるようでしたら、肝臓がつかれているのかもしれません。是非定期的な肝臓デトックスをお勧めします。
参考文献
- https://www.gutmicrobiotaforhealth.com/diving-into-how-the-gut-and-the-liver-talk-to-each-other/
- https://dmr.amegroups.org/article/view/8088/html
- https://www.journal-of-hepatology.eu/article/S0168-8278(21)02081-X/fulltext
- https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/10597755/
- https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC6448735/