
「コロナウィルスだ~!」と大騒ぎしたあの時から、ハンドサニタイザーはバカ売れしましたよね~。抜本的な浄化プロトコルなどを実施することが重要とされ、エレベーターのボタンから、ショッピングカートまで、サニタイザーで拭いていましたね。マスクして、サニタイザーで拭きまくり、殺菌石鹸で手を洗うような生活を続けていた(または続けている?)人も多いのではないでしょうか。
コロナ後に増えたと言われる疾患は沢山ありますが、アレルギー、自己免疫疾患、炎症性腸疾患の上昇を調査した文献は多くあります。コロナにかかったことが原因というものが殆どですが、それだけが理由なのでしょうか?
乳酸菌やビフィズス菌などのプロバイオティクスを沢山摂取しようとよく言われますよね。納豆、キムチ、漬物などの発酵食品も腸内環境を整えるのに良いとされ、せっせと摂取している方もいると思います。でも便秘や下痢が解消されなかったり、お腹がはって、ガスが溜まったりいう症状をうったえる方も少なくありません。
人間の腸内には、人体全体の10倍の微生物細胞が存在し、その数はおよそ100兆個、5000種類にも及ぶと言われています。腸内細菌には「体に良さそうなことをする細菌( 善玉菌)」や「体に悪さをしそうな細菌( 悪玉菌)」、「善玉菌と悪玉菌のうち、多い菌にあわせて働く菌( 日和見菌)」があり、いずれも私たちが口にする食べ物が細菌のエサとなり、体調の良し悪しのバランスを形成しています。なので、せっせとプロバイオティクス系の善玉菌ばかりをとっていると、善玉菌が増殖して悪玉菌が少なくなってしまいますね。すると善玉菌は自分の仕事(強い殺菌力や腸の粘膜を保護する作用)をしなくなってしまうそうです。また、どんなに体に良い食べ物であっても、多量に摂りすぎると大腸で増殖し、小腸に流れ込んでしまう「小腸内細菌増殖症(SIBO)」を発症する恐れもあるようです。
このような状態と同じようなことが、過剰清潔な環境でも起こると言われているのが、
「衛生仮説」という学説です。衛生仮説とは、疫学的データに基づいて提唱された考え方で、人間が健康な免疫システムを発達させるためには細菌にさらされる必要があるというものです。1989年に英国ロンドン大学のストラチャンによって提唱されたこの仮説は、微生物や寄生虫に早い時期から接触していないと、免疫系が抑制され、アレルギー疾患にかかりやすくなると言っています。 その後も、子供の生育期の衛生環境がアレルギー発症に関与することを示唆する論文が相次いで発表されていて、1歳以下のときに室内でイヌやネコを2匹以上飼育している家で育った子供は、その後のアレルギーの発症が少ないといった話は聞いたことがあるのではないでしょうか?また家畜を飼育する農家で育った子供は、同じ地域に住んでいる非農家で育った子供にくらべて、アレルギー症状が少ないという調査も公開されています。2015年に国際的な専門誌『Occupational & Environmental Medicine (職業・環境医学)』に掲載された研究では、スペイン、オランダ、フィンランドの6歳から12歳の子供9000人以上の家庭で、細菌を殺すのに効果的な漂白剤を使用した場合の影響を調査したところ、漂白剤を使用している家庭の方がインフルエンザ、扁桃腺炎、副鼻腔炎、気管支炎、肺炎などの感染症の発生率が高かったのです。
清潔にしていることはいいことですが、それは「殺菌・滅菌」を指すのではないということなんです。プロバイオティクスのサプリを飲む前にちょっと過剰清潔になっていないか、見直してみてください。ハンドサニタイザーや殺菌石鹸は不必要なのかもしれません。そして、なんども書いていますが、抗生物質の摂取も本当に必要なのか、よく医師と相談してくださいね。これは特に乳児・幼児のお子さんには重要な課題です。昔は、肉も魚も野菜もパックされておらず店頭で包んでくれましたし、味噌などの調味料も量り売りが主でした。だから、いい意味で私たちは、知らず知らずのうちにいろいろな雑菌も取り入れ、結果的に腸内細菌の種類も豊富だったのではないでしょうか。
なので、外にでて土いじりや泥まみれになることの方が、乳酸菌・ビフィズス菌ヨーグルトを摂取することよりも健康に近づけるのかもしれません。
参考文献
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC8613742/
https://www.livescience.com/covid-19-linked-to-40-increase-in-autoimmune-disease-risk-in-huge-study
https://the21.php.co.jp/detail/3575