アンチエイジングメカニズム

世の中にはアンチエイジングの商品が沢山ありますよね。顔や身体に付けるクリームや軟膏、体内に入れるサプリメント・投与薬、お肌のコラーゲンを刺激するスキンケア機器など。皆さんも最低1つや2つは試されていると思います。アンチエイジングの根本的なメカニズムは、加齢に伴う細胞レベルの変化を遅らせたり、逆転させたりすることを目指した科学的アプローチです。これらのメカニズムは、細胞の寿命や機能を支える基本的なプロセスに焦点を当てています。今年最後のニュースレターでは今までのおさらいとして、アンチエイジングの主要なメカニズムを解説します。


1. 細胞のエネルギー産生(ミトコンドリアの健康)

  • 役割: ミトコンドリアは、ほぼすべての真核細胞に存在する細胞小器官で、細胞のエネルギーを生産する主要な場所で、栄養素をエネルギーに変換することにより、細胞に必要なエネルギー(ATP)を供給します。しかし、加齢や不規則な生活習慣とともに機能が低下します。これにより細胞の老化が進行します。
  • 対策:
    • NAD⁺(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)の補充(例:NMNニコチンアミドモノヌクレオチドやNRニコチンアミドリボシドの摂取)。
    • 抗酸化物質の摂取(ビタミンC、ビタミンE、CoQ10など)。
    • 適度な運動や断食がミトコンドリアの再活性化を促します。

2. 活性酸素種(ROS)と酸化ストレスの制御

  • 役割: 活性酸素種(Reactive Oxygen Species:ROS)は生体内においてDNA、脂質、蛋白質、酵素などの生体高分子と反応し、その結果脂質過酸化、 DNA変異、蛋白質の変性、酵素の失活をもたらします。酸化ストレスの上昇はこうした分子レベルの生体酸化損傷を増加させ、様々な疾病や 老化亢進につながると考えられています。
  • 対策:
    • 抗酸化物質(グルタチオン、レスベラトロール、カロテノイド)でフリーラジカルを除去。
    • 適度な運動により体内の抗酸化酵素の活性を向上。
    • 紫外線や飲酒・喫煙などの酸化ストレス因子の回避。

3. テロメアの短縮

  • 役割:生物の遺伝情報が収納されている染色体DNAの両端はテロメアと呼ばれ、染色体を保護する役割を担っています。細胞が分裂するたびにテロメアDNAは少しずつ短くなり、これに伴って細胞分裂の回数が減り、やがて分裂しなくなります。これが細胞の老化と言われます。
  • 対策:
    • 生物はテロメアを再生する働きも備えていて、テロメラーゼという酵素が作用することで、テロメアDNAが作り出され伸長します。テロメラーゼ活性を増加させる化合物(中医学や漢方で薬草として活用されるアストラガルスから得られる成分TA-65)の使用。
    • 睡眠やストレス管理でテロメアの損傷を防ぐ。

4. サーチュインとエピジェネティクス

  • 役割: サーチュインは長寿遺伝子と呼ばれるタンパク質群で、細胞の代謝、DNA修復、抗酸化防御を調整します。これらはエピジェネティックな変化を通じて細胞の寿命を延ばします。
  • 対策:
    • カロリー制限や断食がサーチュインの活性を促進。
    • NAD⁺の前駆体(NMNやNR)でサーチュインを活性化。
    • レスベラトロールなどのポリフェノールの摂取。

5. オートファジー(自食作用)

  • 役割: オートファジーは、細胞内の不要なタンパク質やダメージを受けたオルガネラを分解・再利用するプロセスです。加齢とともにこのプロセスが低下し、老廃物が蓄積します。
  • 対策:
    • 断食や低糖質食によりオートファジーを誘導。
    • オートファジーを活性化する成分の摂取。ブロッコリー、芽キャベツ、キャベツ、カリフラワー、ケールなどのアブラナ科の野菜に含まれるスルフォラファンや、緑茶・紅茶、ベリー類やピスタチオなどに含まれるエピガロカテキンガレート(EGCG)が代表的です。
    • 適度な運動で細胞の浄化機能を高める。

6. 慢性炎症(インフラマエイジング)の抑制

  • 役割: 慢性炎症は病気やケガなどの外部要因がないのに、免疫細胞が体内でずっと戦い続けます。その主な原因としては、持続的なストレス、不健康な食生活(高糖質、高脂肪の食事)、運動不足、環境要因(汚染物質、化学物質など)、煙や過剰な飲酒、睡眠不足などが挙げられます。これらの要因は単独でも複合的にも慢性炎症の引き金となり得ます。慢性炎症により老化関連疾患(心血管疾患、糖尿病、神経変性疾患)のリスクを高めます。
  • 対策:
    • 抗炎症成分(オメガ3脂肪酸、クルクミン、ボスウェリア)の摂取。
    • 腸内環境の改善(プロバイオティクスや食物繊維)。
    • ストレス管理や瞑想で炎症を軽減。

7. プロテオスタシス(タンパク質の恒常性維持)

  • 役割: プロテオスタシス(Proteostasis、タンパク質の恒常性維持)とは、細胞内でのタンパク質の適切な生成、折りたたみ(アミノ酸の直鎖が特定の立体構造に折りたたまれること)、輸送、分解を調整し、細胞の機能を正常に保つための動的なプロセスのことを指します。細胞が健全に機能するためには、これらのプロセスが厳密に制御され、バランスが保たれている必要があります。細胞内のタンパク質の折りたたみや分解のバランスが崩れると、老化や疾患を引き起こします。
  • 対策:
    • ヒートショックプロテイン(HSP)の活性を高めることで、ミスフォールディングを防ぎます。例えば、ヒートストレス療法(例:サウナ)やレスベラトロール(ポリフェノールの一種)がHSPを刺激します。
    • 適切なタンパク質摂取で細胞の修復をサポート。

8. エピジェネティクスとリプログラミング

  • 役割: 遺伝子発現はDNAそのものは変化せず、周囲の環境によって外から遺伝子の発現をオン・オフする働きです。特定の遺伝子発現をリプログラムすることで、若返りが可能とされています。
  • 対策:
    • 生活習慣の改善(運動、栄養管理)。

9. 細胞間コミュニケーションの維持

  • 役割: 細胞間のシグナル伝達と言うと、インスリンと血糖値調整が例に挙げられます。血糖値調節の中枢として働くのは間脳視床下部で、ここで血糖値を感知しています。そして血糖値が高くなると、副交感神経を通してすい臓を刺激し、インスリ ンを分泌させま す。しかし、加齢、環境要因、遺伝的要因、生活習慣などが原因で細胞間のコミュニケーションを担う分子やメカニズムに障害を引き起こします。そうなると臓器や組織の機能低下につながります。
  • 対策:
    • 抗酸化ケア
    • オートファジー促進
    • 抗炎症対策
    • ミトコンドリア健康のサポート

10. 血管と循環機能の改善

  • 役割: 血管と血液は体の機能を維持するために重要な役割を担っています。なので血流の低下は老化の主要な原因と言われています。血管年齢の検査というのもありますね。
  • 対策:
    • バランスの良い食生活(抗酸化物質を含む食品、オメガ3脂肪酸、食門繊維、カリウムの摂取、一酸化窒素を促進する食品)
    • 定期的な適度な運動
    • ストレス管理
    • 禁煙・飲酒の制限
    • 栄養補助食品とサプリメント

これらのメカニズムに基づくアンチエイジング対策は、科学的な裏付けを持つ成分や生活習慣の改善を組み合わせることで、老化を遅らせるだけでなく、全身の健康を維持する効果が期待されています。まずはできることから始めてみましょう。2025年も輝ける年でありますように!

参考文献

https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC4779179/?utm

https://www.nature.com/articles/s41419-020-2649-z?utm

https://www.news-medical.net/news/20230717/Mitochondrial-repair-protein-discovery-may-lead-to-new-anti-aging-treatments.aspx?utm

https://www.mdpi.com/2076-3921/13/4/394?utm

https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC2819595/

https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC10850353/

https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC6755196/

https://www.nature.com/articles/s43587-021-00098-4?utm

https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/acel.13753?utm

https://academic.oup.com/biomedgerontology/article/69/Suppl_1/S4/587037?utm

https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC6457053/?utm

https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC3101847/

https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC4022129/

https://hms.harvard.edu/news/loss-epigenetic-information-can-drive-aging-restoration-can-reverse?utm

https://www.news-medical.net/news/20240919/Do-long-genes-hold-the-key-to-understanding-the-genetic-underpinnings-of-aging.aspx?utm

https://www.news-medical.net/news/20231130/Study-shows-how-aging-affects-communication-between-skin-cells.aspx?utm

https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC10441648/?utm

コメントを残す