肝臓と認知症

認知症の症状を持つ人はここ数年急激に増えているようですが、そのご家族の苦労は大変なものだと祖母を介護していた母を見ていたので、少しは理解しているつもりです。しかし、様々な症状、様々な状況下の中で想像を絶するようなご苦労もあろうかと察します。老人看護師として働く友人の話を聞いたり、水道屋としてお客さんの家に行って垣間見た家庭の杜撰な状況を教えてもらったりと、心が痛む話ばかりです。また働き盛りの若い世代が発症した場合には、高齢者よりも家族など周囲の人に及ぼす影響は大きい傾向にあるかと思います。多くの病気がそうであるように、遺伝と言われるよりも認知症は生活習慣病の1つと考えられています。人との関わりが少ない、室内で過ごすことが多い、飲酒の量が多く頻繁に飲むというのも影響していますし、必要な栄養が吸収されていないと言われています。そこで関係するのが、ホモシステインです。前回のブログでもでてきた、ホモシステイン。その役割と予防について説明したいと思います。

ホモシステインは、血液中に含まれるアミノ酸の一つで、必須アミノ酸で含硫アミノ酸である「メチオニン」の、代謝における中間生成物です。といってもわかりにくいので、図で説明します。

ヒトの身体に必要なアミノ酸は20種類、そのうち体の中で生成できないために、全て食品から摂取しなければならないアミノ酸が必須アミノ酸です。食物に含まれるタンパク質は胃腸で消化され、最小単位のアミノ酸となって吸収されます。アミノ酸はさらに肝臓で分解、または作り替えられて、体の細胞や生体反応に欠かせない酵素を作ります。このアミノ酸のひとつである「メチオニン」は、肝機能を高めたりアレルギーを引き起こしてしまうヒスタミンの血中濃度を低下させたりする働きがあります。またアルコールを肝臓で分解してくれる働きを行う酵素の主な原料でもあります。このメチオニンが代謝されるとき、一時的にできるのがホモシステインです。

ホモシステインはメチオニン、あるいはシステイン、グルタチオンに代謝しますが(上図参照)、代謝経路に異常が生じると、血中のホモシステイン量が上昇します。

ホモシステインはメチオニンが肝臓においてリサイクルされる際につくられますが、肝臓の中で再びメチオニンへと戻される(変換する)際に必要なのが葉酸、ビタミンB12です。これらの栄養素が不足するとホモシステインからメチオニンへの変換が滞るため、ホモシステインが過剰になります。その結果、肝臓から血液中に流れ出た状態が高ホモシステイン血症になります。またビタミンB6が不足するとホモシステインを「シスタチオニン」を介してグルタチオンに変えることができず、同じく「高ホモシステイン血症」になるのです。

高ホモシステイン血症にまでならなくても血中のホモシステイン濃度が高いのは脳や血管にダメージを与え、アルツハイマー病を発症しやすくすると言われています。また先月のブログでもお伝えしましたが、心血管疾患や脳卒中の要因であるとも言われています。是非ホモシステインの数値を調べてみてください。その数値によっては認知症の前触れまたは既に気が付かなくても認知症の症状がでているかもしれません。

しかし、この代謝機能に必要なビタミンB群の栄養素を補充してあげることも必要ですが、この肝臓自体が弱っていたら、どんなに栄養を与えてもちゃんと機能してくれません。なので、ビタミンB群を補充するのと同時に、肝臓を常に良い状態にしておくことです。血液検査では何も引っかからないから大丈夫と安心しているかもしれませんが、本当に身体に異常は起こっていませんか? 肝臓は休むことなく毎日毎日、農薬、除草剤、殺菌剤、処方薬、アルミニウム、鉛、銅、水銀、ウイルス、バクテリアなど、何百種類もの毒素、汚染物質、病原体と戦ってくれているんです。肝臓に負担をかけることを極力控える生活を目指して、認知症を予防しましょう。これは自分のためだけでなく、周りにいる愛する人のためにも。

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