
死因のトップと言われるのがアメリカでは心疾患なので、コレステロール値を下げる薬や高血圧を下げる薬がよく処方され、患者さんもある年齢を過ぎると飲むのが当たり前と思っている人が多いように見受けられます。日本でも心疾患は死因の第2位におかれ、様々なお薬が使われています。一般的な健康診断ではコレステロール値と血圧値の数字のみで、お薬が必要か判断されがちです。意外に知られていないその他の血液検査をすることで、より詳しいことが判明すると思いますので、ご紹介します。
- コレステロール粒子
一般的なコレステロール検査では全体像がわからないと言われていますが、注目すべきはコレステロール粒子の大きさと粒子の数。これは以前にも詳しく書きましたが、悪玉と言われる低密度リポタンパク=LDL(Low Density Lipoprotein)のコレステロール濃度(LDL-C)が高くてもLDL粒子数 (LDL-P)が低ければ、心血管リスクが低いことになります。反対にLDL-Cが正常でも、LDL粒子の数が多い場合は要注意になります。そしてもう一つの指標は、粒子の大きさです。LDLが小さいほど血管内皮に炎症を引き起こしやすく、これがプラーク形成につながる一連の現象の引き金となると言われています。しかし、粒子の大きさが小さくても粒子の数が正常範囲内であれば問題ないというのが最近の認識です。
- アポリポ蛋白B(アポB)
脂肪は水に溶けないので、血液の中で脂質(中性脂肪やコレステロール)を運ぶ時は水になじむ運搬輸送車が必要で、この輸送車の役目をするのが、蛋白質で、脂質を積んだトラックを「リポ蛋白質」と言います。そしてこのトラックに乗っているのはLDL、善玉と言われる高密度リポ蛋白=HDL(High Density Lipoprotein) だけでなく、カイロミクロン(CM)、超低比重リポ蛋白質(VLDL)などもあります。アポリポ蛋白Bとは構造的なたんぱく質で、CM、VLDL、中密度リポ蛋白(IDL)、LDL、リポ蛋白(a)の粒子それぞれに1つずつくっ付いています。なので、アポリポ蛋白Bの数値を調べることは動脈硬化を引き起こす可能性のあるすべての粒子を網羅していると言われています。
- オメガ3脂肪酸
オメガ3脂肪酸は、神経細胞やその他の脳細胞にとって、脳の情報処理に使われる何兆もの結合を作り、維持するために不可欠です。また、すべての細胞が機能するために必要なエネルギーを作るのにも欠かせません。オメガ3脂肪酸は、炎症を抑え、心臓の健康をサポートする重要な役割を果たすことから、「健康な脂肪」または「良い脂肪」として知られています。その大きな利点とは中性脂肪値を下げる働きがあることです。血液中の中性脂肪が多すぎると動脈硬化のリスクが高まり、心臓病や脳卒中のリスクが高まります。さらに、オメガ3はHDL(善玉)コレステロールを高め、血圧を下げる効果もあります。オメガ3レベルが高いほど、心臓病や心臓突然死のリスクが低下すると言われ、研究によると、オメガ3指数が8%以上の人は、心臓関連の問題のリスクが最も低いと認識されています。
- ホモシステイン
ホモシステインは血液中に含まれるアミノ酸です。高濃度になると、動脈の内膜に損傷を与え、動脈硬化(動脈の硬化や狭窄)などの心血管系の問題を引き起こす可能性があると言われています。ビタミンB群はホモシステインを体に必要な他の物質に変換するのを助けるので、これらのビタミンが不足すると、ホモシステインが血液中に蓄積してしまいます。ホモシスチンは肝臓の機能を高める必須アミノ酸として摂取を薦められるのですが、動脈硬化の原因となる老化や生活習慣病のリスクを高める危険な物質でもあります。
- コエンザイム Q10
コエンザイムQ10は強力な抗酸化作用を持った補酵素(酵素の手助けをしてくれるもの)です。特に細胞内のミトコンドリアに多く存在し、ATPという細胞機能を動かすエネルギーを作り出すのにとても大切な成分です。そしてATPは、心臓のように大量のエネルギーを必要とする臓器にとって特に重要なので、CoQ10は心臓の筋肉内に多く存在するとも言われています。加齢とともに、CoQ10レベルは自然に低下していきます。またある種の薬、特にコレステロールを下げるために使われるスタチン系薬剤は、CoQ10レベルをさらに低下させる可能性があると言われています。CoQ10レベルが低いと、疲労、筋力低下、運動能力の低下などの問題を引き起こす可能性もあるのです。
上記のような血液検査をすることで、CoQ10、ビタミンB、そしてオメガ3脂肪酸の接種の必要性がわかり、食生活の改善を含めた生活習慣を見直してお薬に頼らない健康な体を取り戻しましょう。
参考文献
https://www.optimaldx.com/blog/homocysteine-optimal-range
https://precisionhealthreports.com/ldl-p
https://emedicine.medscape.com/article/2087335-overview?form=fpf#a4