先月ハワイに行ってきました。5年ぶりに第2の故郷に帰り、ローカルの面影がなくなったワイキキ、カカワコ、アラモアナに胸を痛めていましたが、大好きなコナコーヒーはまたもや高くなっていたのにびっくり!住んで居た頃はライオンコーヒー店に寄って、入れたての美味しいコナコーヒーを1ドルぐらいで飲んでいたのに、今や7オンスのパッケージが32ドル! ハワイに限らず物価が上がっているのはどこでも当たり前となっていますが、この過剰な値上がりはなぜと思ってしまいました。ハワイの友達曰く、ハワイ島でコナコーヒーの農場を手放す日本人の知り合いを何人も知っているとか。。。なんでも働いてくれる人がいないそう。たまたま出くわした地元のコナコーヒーの問屋さんはローカルのコナコーヒー農家が訴えて値段をあげたからとか。そしてその問屋さんは値段が高すぎて売れないと嘆いていました。コナコーヒーはハンド・ピッキングで労働がきついですし、ハワイ島のコナという限られた土地での生産なので、通常のコーヒーよりコストがかかってしまうのは理解できますが、こんなにも値上がりしてしまい、ハワイの地元の人たちが飲めない値段になっていいのかと悲しい気持ちになりました。ハワイに限らず地元生産なのに、高価すぎて手が出せず、産業農家で大量生産された野菜や果物、またその食材を使った加工食品を食べるしかない状況に追いやられているような気がします。この状況は自然な流れなのでしょうか?
欧州の農民デモ
昨年末に始まった欧州の農民デモについては皆さんご存知ですか?欧州連合(EU)の農業政策に対する継続的な抗議行動の一環としてデモを行っています。2019年にも欧州でトラクターデモが起きました。その時は、気候変動などの環境問題の解決法として農業が温暖化の「原因」として悪者扱いされることへの鬱積した怒りが発端と言われています。しかし、今回起きた農民デモは、欧州連合が交わした「グリーンディール政策」に怒りの矢が向けられています。というのも畜産・酪農家に飼育頭数削減や農場の強制閉鎖を強要しており、ディーゼル燃料への補助金削減、ディーゼルエンジンへの増税、また農地の一定割合を休耕地とし、作付けをおこなわないなどもつけ加えています。これでは地元の農家を消滅させようとしているしか思えません。また農薬や化学肥料の使用削減、有機農法、堆肥使用なども含まれており、目標としてはよいのですが、コストが高く、生産量が減少するので、外からの補助がなければ農家の経営は苦しくなります。欧州連合は農民を悪者とせず、農民たちの生活が豊かになり、かつ環境に良い農業を少しずつ進めていくことが必要なのに、真逆の方針を掲げています。
「国民に安全な食品を」と農家に厳しい規制を課しているにも関わらず、中南米やウクライナからは安全規制も関税もなしの農産物を大量に安く輸入しているんです。なので、そのような安値の輸入ものには地元の農家は勝てないのです。凄い矛盾だらけではないですか?中小農家を追い出して徳をするのはだれなのでしょうか?大規模工業農家ではないかと私は思います。現にEUの2021年から2027年の予算の3分の1、3867億ユーロが農家への補助金として使われます。しかし、この補助金は耕作面積に応じて支払われるのです。結果的にEUの農業予算の約80%は、およそ20%の農家、つまり最も大規模で裕福な農家に支払われるのです。
新ゲノム技術
EUは農薬や化学肥料の使用規制を強めると同時に、「気候変動に強く、病害虫に強く、肥料や農薬の使用量が少なくて済み、収量を確保できる改良品種の開発を可能にし、化学農薬の使用量とリスクを半減させ、食料システムの持続可能性と回復力を高めるための革新的なツール」として、新ゲノム技術を推奨しています。つまり遺伝子組み換え農作物を認めようと進めているのです。
国連食糧農業機関によれば、1900年から2000年の間に世界の作物品種の75%が消滅したと言われています。八百屋さんという店舗が減ってしまった日本の都市でも同じような野菜や果物しか見かけなくなったと思われている方も多いのではないでしょうか?ましてここNYのファーマーズ市場でも季節の野菜の種類は数多くありません。そしてバイエルやコルテバ(デュポン)のような種子市場を牛耳っている巨大多国籍企業が作物品集多様性を滅ぼしていっています。というのも種子は知的財産として私的所有可能で、情報財としてグローバルに取引可能な商品に転化しているので、販売した品種の農家による使用を厳しく制限しているのです。通常、購入者は、農作物の種子を保存して翌年に交換したり再播種したりすることを禁止する契約を結ばなければならないのです。違反したら多額の罰金を払うことになり、多数の訴訟も起こっています。さらに、伝統的に続けられてきた(したがって作物品種多様性の源泉ともなってきた)農家の自家採種や農家間の種子交換は違法とされているのです。
この巨大多国籍企業は遺伝子組み換え種子の大手生産者でもあるので、EUが遺伝子組み換え農作物に対しての規制を緩めるということは、さらに私たちの食を彼らの知的財産で支配されていくことになるでしょう。このように「生物多様な生態系の確保を」とグリーンディールの一環としてEUは農家に様々な条件を強制していますが、EU自体が進めている方向性は矛盾していて、全く逆をいっているとしか思えません。
食の行方
コロナ以降物価がどんどん上がって、私たち一般家庭では今まで楽しめていたことができなくなっていることが多くなり、特に食費は大幅に上がった思います。そんな時にケロッグ社のCEO、ピルニック氏は「夕食にシリアルを食べれば」などとコメントして私たち消費者に寄り添うわけではなく、馬鹿にするような態度です。グラウンドワーク共同体というシンクタンク団体の最近の報告書によりますと、2023年第2四半期と第3四半期のインフレの53%は企業利益によるものであり、パンデミック開始以来34%が企業利益によるものと言われています。またカンザスシティー連邦準備銀行は2023年の報告書で、パンデミックによる景気後退から景気回復の最初の2年間は、企業利益がインフレ率の41%を占めていたことを明らかにしました。バイデン大統領もまた、低い支持率を取り戻すために、大手企業の強欲が高インフレをもたらしていると有権者の心に響くような経済メッセージを述べています。この高インフレはバイデン政権の経済対策の欠陥だと主張する経済学者もいますが、高インフレでぼろ儲けしているのは多国籍大企業であることは間違えなく、この高インフレは米国に留まっていません。高インフレに対する一般庶民の為の対策を考案するべきであることは言うまでもありません。なので、私たちもEUの農民たちのように立ち上がって、もっと行動を起こすべきではないのでしょうか?また本当に自給自足することが必要になってくると思います。食という私たちが健康で幸せでい来るための源を自分たちで守らないといけないのではないのでしょうか。
参考文献
https://www.euronews.com/my-europe/2024/02/13/all-you-need-to-know-about-the-eu-agriculture-sector
https://petscareinf.com/article/why-farmers-can-t-legally-replant-their-own-seeds/2731
https://www.cnn.com/2024/03/11/economy/inflation-corporate-greed-biden/index.html
