
細菌が原因で引き起こされる病気に有効なのが、原因となる細菌などを殺したり、その増殖を抑制したりする働きを持つ「抗生物質」です。 この抗生物質により、様々な感染症の治療が可能となりました。
しかしながら、1980年以降、従来の抗菌薬が効かない「抗生物質耐性」を持つ細菌が世界中で増え、感染症の予防や治療が困難になるケースが増加しています。米国疾病管理予防センター(CDC)は、”抗生物質耐性は現代における最大の公衆衛生上の課題の一つである “と述べていて、アメリカでは毎年少なくとも280万人が抗生物質耐性感染症を発症し、その結果35,000人以上が亡くなっているとのことです。このように抗生物質耐性によって感染を食い止めることができなければ、敗血症などの危険な合併症につながり、生命を脅かすことになるのです。そしてその「抗生物質耐性」を持つ細菌づくりに貢献しているのが、人工甘味料だったのです。
一般的に使用されている人工甘味料(サッカリン、スクラロース、アスパルテーム、アセスルファムカリウム)の世界的な消費量は、年間約117,000トンと推定されています。食品や飲料を摂取した後、人工甘味料は代謝されることなくヒトの消化器官を通過し、その濃度推定値はヒトの尿中に数十mg/L、ヒトの消化管内に数百mg/Lにもなるのです。そしてこの人工甘味料は腸内細菌の抗生物質耐性遺伝子(ARG)を拡散させ、致命的な感染症を増加させる一因となっています。
ARGの出現は、遺伝子水平伝播(HGT)と呼ばれるプロセスによって推進されています。(通常、生物は細胞分裂によって母細胞から娘細胞へと「垂直」に染色体がコピーされますが、親から子孫のような生殖を通らずに、個体から個体へ、あるいは種から別の種へ遺伝子が移動することを水平伝達(伝播)と言います。)あるバクテリアから別のバクテリアに遺伝物質を移すことによって、ARGを増やしていくというメカニズムです。 2021年の2月に査読付き学術雑誌であるThe ISME Journal (国際微生物生態学会-International Society for Microbial Ecology) に発表した研究チームは、このプロセスを「細菌の有性生殖や交尾に相当するもので、2つの細菌が直接接触することで耐性遺伝子が供与者から受容者に移行する」と説明し、その結果、受容者が多剤耐性菌(多くの薬が効かなくなる)となる可能性があると述べています。また、このような人工甘味料の摂取は、抗生物質によるものと同様の腸内細菌叢の変化と関連していることがわかってきました。
ヒトの微生物内の細菌群に含まれるARGの数は計り知れないと言われています。 例えば、『Nature』誌に掲載された「抗生物質耐性遺伝子のグローバルな健康リスクの評価」と題する研究では、ヒトの腸内細菌叢に24種類の抗生物質に対する耐性を集合的に付与する2,561種類のARGが発見されました。 この研究の結論として 「我々の結果は、23.78%のARG、特に多剤耐性を付与するARGが健康被害をもたらすことを示している」と述べています。
先月(2022年12月)「腸内細菌」という医学雑誌で発表された研究では、テストした4種類の人工甘味料(サッカリン、スクラロース、アスパルテーム、アセスルファムカリウム)すべてが活性酸素種の産生(すなわちフリーラジカルによるダメージ)を増加させ、「プラスミドを媒介した腸内細菌への共役転写」という働きを促進することがわかりました。これは、主要遺伝子を交換することによって抗生物質や人工甘味料などの異種物質に対する細菌の適応を早める遺伝子水平伝播(HGT)の一形態です。そして合成甘味料は、抗生物質よりも耐性菌の発生を助長する可能性があり、通常は抗生物質耐性遺伝子(ARG)の交換ができない細菌株に対しても人工甘味料によって障壁を克服してスーパーバグ遺伝子を作りだしてしまっているというのです。

本当に怖いものだらけの人工甘味料です。 人工甘味料はキリシトールやクロレッツなどほとんどのガムに使われていますし、カルピス、キリン メッツ、大人の紅茶などの清涼飲料、スポーツドリンク、缶コーヒーにも沢山使われています。 また飴、ドレッシング、お酒やお薬までも人工甘味料が使われているんですね。アメリカでは色々なところで出しているエナジードリンクにもたっぷり入っているので、必ず原材料名を調べてください。 なおアスパルテームは「L-フェニルアラニン化合物」と明記されていることが多いのでよく見てくださいね。