眠りを司るホルモン

メラトニンと聞くとサプリメントと思ってしまう人も多いかと思いますが、メラトニンは脳に存在する小さな内分泌器である松果体から分泌されるホルモンです。そこでメラトニンを血中に放出する役割を担っています。松果体は暗闇に反応しメラトニンの生産を開始し、そして光に反応すると生産を停止するのです。メラトニンは、体の概日リズムの中で最も重要な睡眠と覚醒のサイクルを調整し、深部体温(身体の内部の方の体温)にも影響を与えると言われています。年齢を重ねる毎にこのメラトニンホルモンは減少していくので、ある年齢を超えると寝つきが悪い、眠れないということが起こってしまうので、メラトニンサプリメントが使われるようになるわけです。ですが、メラトニンの機能は「眠りを司るホルモン」だけでなく、様々な働きをしてくれる、重要なホルモンなのです。

抗酸化作用

まず第一にメラトニンには抗酸化作用があり、アポトーシス(細胞死)を伴うプロセスにも関与しています。メラトニンは、活性酸素消去作用により直接的に、抗酸化酵素の刺激により間接的に、またグルタチオンペルオキシダーゼやスーパーオキシドディスムターゼなど他の抗酸化酵素の合成刺激により抗酸化機能を発揮します。メラトニンは、他の古典的な抗酸化物質とは異なり、「カスケード反応」(※一つの素反応が別の部分に活性な官能基を生成、それがさらに反応を起こす反応形式)に関与している。このメカニズムにより、従来の抗酸化物質が1つ以下の活性酸素しか消去できないのに対し、メラトニン1分子は最大10個の活性酸素を消去する能力を持っていると言われています。

抗炎症

次にメラトニンは抗炎症の作用があります。敗血症のマウスモデルにおいて、メラトニンは、インターロイキン6(IL-6)や腫瘍壊死因子-a(TNF-a)の血清レベルの減少によって炎症を減少させたという研究があるように、メラトニンは炎症性疾患の予防に優れた効果を発揮します。メラトニンは、インターロイキンや腫瘍壊死因子(TNF)を調節することができ、 メラトニンの補給は、炎症マーカーのレベルを下げ、炎症性疾患の予防と治療の両方に有用であると考えられています。

免疫機能

更にメラトニンは免疫機能にかかわる細胞を活性化させるはたらきがあります。科学者たちは、メラトニンが免疫系にシグナルを送り、免疫系が「語りかける」ことを発見したのです。この「語りかけ」は、健康な免疫力を微妙に整合し、調整し、ウイルスからがん細胞まで、さまざまな病原体から身を守る自然免疫力を高めているのです。また、特定のウイルスや病気の原因となる細菌、寄生虫に対する免疫攻撃力を向上させます。

神経疾患の予防

そしてメラトニンは、血液脳関門(BBB)の完全性を維持することにより、神経疾患の予防に役立つと考えられています。アルツハイマー病など、高齢者がかかる神経疾患の多くは、BBBの損傷から始まると言われています。また神経伝達物質とグリア細胞の働きを助けるので、うつ病、不安神経症、両極性障害、脱人格障害、強迫性障害、さらに原因不明の深い悲しみ、喪失感、頭がぼーっとする、物忘れ、パニック発作、神経質、軽い疲労感など精神疾患を患っている人に効果があると言われています。また、メラトニンは脳の縮小や萎縮を食い止め、腫瘍や嚢胞を縮小させたり、そもそも腫瘍が大きくならないようにする効果もあるのです。

このようにメラトニンには様々な機能があり、必要不可欠なホルモンだと言えます。年齢を重ねる毎に減ってしまうメラトニンですが、タルトチェリー、クコの実、ナッツ類などメラトニンを多く含む食材を摂取したり、メラトニンのサプリメントを上手に利用することが様々な疾患の予防につながるでしょう。またメラトニンのサプリメントを摂取する時は抗酸化物質を多く含む食品と組み合わせることで(例えば、ワイルドブルーベリー、ラズベリー、葉物野菜、リンゴ、サツマイモなど)、脳内の有害重金属の酸化を食い止め、アルツハイマー病や認知症、脳腫瘍などから脳を守るのに役立ちます。また、これらの食品に含まれる栄養素は、メラトニンと結合して脳や体に受け入れられやすくなり、薬効成分の睡眠効果やストレス緩和の効果を高めます。

参考文献

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