食物繊維が健康な身体を保つのに大切であることは多くの人が認識していますね。アメリカで乳児にも食べさせている「チェリオズ」には 『 飽和脂肪とコレステロールの少ない食事で、チェリオス™シリアルのような全粒オーツ食品から毎日3gの水溶性食物繊維を摂取すると、心臓病のリスクを減らすことができると言われています。チェリオスシリアルは1食あたり1gを提供しています。その他のフレーバーは、1食あたり0.75グラムです。』 というメッセージが書かれています。私自身、超加工されたチェリオシリアルが健康によい食品だとは思っていませんが、このメッセージからも食物繊維が身体に良いというのは理解できますね。そして素晴らしいことに食物繊維は心臓病予防だけでなく、C反応性蛋白質を減少させる働きもあると言われています。
C反応性タンパク質(CRP)とは、炎症に反応して肝臓が産生するタンパク質です。炎症は、感染症やケガ、ウイルスなど、さまざまな原因で起こります。しかし、あなたの生活習慣の選択によって、慢性的な炎症を示すCRPのレベルが上昇してしまうのです。慢性炎症の原因となる生活習慣には、喫煙、肥満、アルコール、慢性的なストレス、有害化学物質への暴露などがあります。慢性的な炎症と付き合っていると、体の炎症反応はやがて健康な細胞や組織、臓器にダメージを与えるようになるのです。これらはすべて、がん、心臓病、関節リウマチ、2型糖尿病、肥満、喘息、認知機能の低下、(高齢者の)などの病気の発症に関係しているのです。
ですから、CRPを低く保つ(0.5mg/dL以下)ことは、私たちの健康にとって非常に重要です。食物繊維を多く摂取している人と、あまり摂取していない人のCRP値の比較の研究は多々あり、いずれの研究も、食物繊維の摂取量が多いほど、CRPが低下することを示しています。
ではどのように食物繊維が炎症を抑えてくれるのでしょうか? 腸内細菌が食物繊維を消化すると、副産物として酪酸を含む短鎖脂肪酸(SCFA)が生成されます。そして酪酸は、炎症を起こしたミクログリアによる有害な化学物質の産生を抑制してくれます。ミクログリアは、脳や脊髄に存在する神経グリア(グリア細胞)の一種です。 その中のひとつがインターロイキン-1βで、これはヒトのアルツハイマー病と関係があるとされています。
あるイリノイ大学の研究で、低繊維食と高繊維食を若いマウスと老齢のマウスのグループに与え、血中の酪酸とその他のSCFAs、および腸内の炎症性化学物質の濃度を測定しました。高繊維食は、若いマウスと老齢のマウスの両方で、血液中の酪酸と他のSCFAを増加させました。しかし、低繊維食で腸の炎症が見られたのは、老齢のマウスだけでした。 一方、老齢のマウスに高繊維食を摂取させると、腸の炎症が劇的に抑制され、年齢による差は見られませんでした。そこで研究者たちは、脳内の炎症の兆候、すなわちミクログリアにおける50種類のユニークな遺伝子を調べることにしたのです。 そして、高繊維食は、高齢の動物において、その炎症性プロファイルを減少させると結論づけることができたのです。この研究の代表者であるジョンソン氏は、「食物繊維は、本当に腸内の炎症環境を操作することができます」と述べました。
食物繊維は、個人の食生活に不可欠な成分であり、 食物繊維の抗炎症作用は、血清hsCRPで確認することができます(血清hsCRPは微量のC反応たんぱく質 (炎症時に増加するたんぱく質) の増減を感知する検査で、動脈硬化や狭心症などの心臓の病気の診断、管理に用いられています。)食物繊維は、SCFAの他に、ポリフェノール、アディポネクチンを介して、hsCRP 血清を低下させる可能性があると言われています。このような様々なメカニズムを通じて、食物繊維は炎症とその関連疾患の予防につながるのです。
米国農務省が推奨する1日の食物繊維摂取量は、食事1,000カロリーあたり14グラムです。しかし、脳卒中を避けるためには、水溶性食物繊維(豆類、オート麦、ナッツ類、ベリー類に多く含まれる)を1日25g、不溶性食物繊維(全粒粉に多く含まれる)を1日47g摂取するように心がけるべきとする専門家もいます。 そこでまず、肉、卵、乳製品を野菜、果物、豆類、全粒粉に置き換えることに重点を置きましょう。 Care2による、食物繊維を多く含む食品のリストをご紹介します。毎日の食事に、このリストで紹介されているものを取り入れると、体が喜ぶと思いますよ。

参考文献
https://academic.oup.com/ajcn/article/83/4/760/4649102?login=false
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3743439/
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https://jamanetwork.com/journals/jamanetworkopen/fullarticle/2790576
https://faseb.onlinelibrary.wiley.com/doi/abs/10.1096/fasebj.31.1_supplement.648.8
https://aces.illinois.edu/news/dietary-fiber-reduces-brain-inflammation-during-aging