
約2年前、2020年の9月初めに右目の瞼にゴリゴリするしこりのようなものがあることを発見しました。抑えると痛い感じで、目も腫れぼったかったので、色々な眼科医に診断してもらいました。そしてその内の1人の眼科医が造影剤を使ったMRIを処方しました。私は約14年前に子宮卵管造影検査をした時、痛くて起き上がれず、歩くのも大変だった経験がありました。子宮卵管造影検査は腟から子宮内に細いチューブを入れて固定し、子宮口から造影剤を注入します。そして造影剤が、子宮・卵巣・お腹(骨盤)のなかに拡がる様子をレントゲン写真で確認するのです。子宮卵管造影検査はMRIとは全く違う検査ですが、造影剤というだけで、「絶対無理」と思い、検査日には造影剤なしで行いました。その眼科医は造影剤なしのMRI結果を見てとても不満気でしたが、やらなくてよかったと今は思っています。というのも造影剤を使っていたら、ガドリニウム沈着症(gadolinium deposition disease – GDD)という完治の可能性のない病気にかかっていたかもしれないのです。
MRIを受ける前に静脈内投与される造影剤はガドリニウムが使われています。ガドリニウム造影剤は、MRIで見える組織の種類によっては、その細部を改善し、診断の精度を高めるために使用されます。しかし、ガドリニウムは重金属であるため、水俣病を引き起こした水銀やイタイイタイ病を引き起こしたカドミウムと同じように,生命に対して有毒とされています。重金属の毒性は、エネルギーレベルを低下させ、脳、肺、腎臓、肝臓、血液構成などの重要な臓器の機能を損傷する可能性があります。そして長期間の暴露は、多発性硬化症、パーキンソン病、アルツハイマー病、筋ジストロフィーなどの疾患を模倣した身体的、筋肉的、神経的変性過程を徐々に進行させる可能性があります。
このように重金属は危険性が伴いますが、ガドリニウム造影剤は キレート法と呼ばれるプロセスを経るため、体内でより安全に使用することができると言われています。キレート法では、ガドリニウムと混合された他の化学イオンが有害金属を取り囲み、体への害を防ぐと同時に、組織のコントラストを高める能力を維持することができます。そして、健康な腎臓は、キレート化されたガドリニウムが毒性反応を起こす前に尿として体外に排出するのです。
がしかし、MRI検査後に有毒な化学物質に悩まされる人は少なくなく、実際に「ガドリニウム沈着症」をネットで検索すると(英語でですが)、ガドリニウム造影剤の被害者を扱っている法律事務所のサイトがたくさん出てきます。
ガドリニウム造影剤を使ってのMRIは1980年代に始まりましたが、1997年には初めてのGDDの症例がカリフォルニア州の透析患者15名から発見されました。腎機能が高度に低下した患者さんが罹患する新しい線維性皮膚疾患と考えられたため、腎性全身性線維症(Nephrogenic Fibrosing Dermopathy – 後にNephrogenic Systemic Fibrosisと改名)と命名されました。しかし、当時はどうしてそうなったのか、誰もわかりませんでした。
時がたつにつれて同じような疾患になる人が増え、また腎機能が正常な人にも非常に深刻な状態を引き起こしていることがわかり、ついに2016年、研究者たちは体内のガドリニウム沈着を “ガドリニウム沈着症 “という新しい疾患カテゴリーとして捉えるべきだと提唱しました。ガドリニウム沈着症は、ガドリニウムがキレート剤から遊離し、腎臓で除去されずに体内に沈着することで発症します。つまり毒が体中に回っていくんですね。
ご存知の方もいらっしゃると思いますが、ジェナ・ノリスさん(俳優、チャック・ノリスさんの妻)は、関節リウマチの評価のために何度も造影MRIを受けた後、重度のガドリニウム沈着症に悩まされました。このお話は以下からご覧いただけます。(英語のみ)
ジェナさんが言うように、ガドリニウム沈着症の患者さんの多くは、治療にかかる莫大な資金などありません(ご本人は2年で1億ドル以上使ったと言っています)。ガドリニウム沈着症は皮膚の線維化や肥厚、関節の拘縮を呈し、 線維化は内臓臓器まで及び、死亡に至る症例も報告されています。
その他の症状としては骨や関節の痛み、皮膚の灼熱感や針が刺さるような感覚、脳に霧がかかった感覚、頭痛、 視力や聴力の変化、皮膚の肥厚や変色などの皮膚の変化、 吐き気、嘔吐、下痢、 呼吸困難、インフルエンザのような症状、金属味と沢山の症状が挙げられています。そして最も懸念されるのはMRI検査の後、数ヶ月から数年経ってから症状が現れることもあるということです。現在米国でのガイドラインはガドリニウム沈着症のリスクを検査が確定する前に患者さんに伝えるべきとされていますが、この告知は外来患者さんに限られ、入院患者には告知しなくても良いことになっているのです。
診断が必要な内容によっては、造影MRIが避けられない場合がありますが、他にどのような診断方法があるのか、ぜひ調べてみることをお勧めします。冒頭でお話した私の不思議な目の問題は、NYで複数の医師(膠原病専門医にまで)に診てもらいましたが、答えが見つからず、日本の医師に診てもらうことにしました。東京の有名な眼科医に診てもらったところ、見て触っただけで涙腺脱臼(脱臼??と驚きましたが。。。)と判明しました。なので造影MRIは始めから必要なかったわけです。ちゃんちゃん!
参考文献
https://childrenshealthdefense.org/defender/toxic-heavy-metals-mris-radiologists-hide-cola/