
初っ端からお尋ねしますが、皆さんはタンスやクローゼットの中にウールやカシミヤなどの天然素材のセーターやジャケットを何枚お持ちですか? 私の場合化学繊維(化繊)や化繊が混ざったウールやカシミヤが大半でした。レーヨンやナイロンなどの化学繊維が色々な製品に使われるようになり、衣服の素材も低価格商品を生産する上で天然ではない、化繊がファストファッション (fast fashion)と呼ばれるブランド商品に使われてきました。ファスト・ファッションとは最新の流行を取り入れながら低価格に抑えた衣料品を、短いサイクルで世界的に大量生産・販売するファッションブランドやその業態です。日本ブランドで言えばユニクロ、しまむら、アオキなど、アメリカブランドはギャップ、オールド・ネイビー、アバクロ、スペインのザラ、イギリスのトップショップなどがあります。1万円では買えなかったウールのセーターが同じデザインでアクリル製なら2枚買えるというのは経済的に嬉しい話ではありますが、両手をあげて喜んで良いのでしょうか?
トレーニングウェアがファッションになる時代で、ヨガパンツ姿で買い物したり食事をしたりしている人をよく見かけます。あのピた~っとして引き締めてくれる感覚のヨガパンツは柔軟性があり、汗を吸い取り、防水加工もしてあってとっても便利でスタイリッシュ。しかし、なんでもそうですが、機能性が高いとなると色んな技術加工がしてあって、自然でないものの塊となっているんですね。 ヨガウエアで有名なルルレモン(Lululemon)が使う生地も実は「フォーエバーケミカル」―何千年も環境に留まることができるので – と言われるPFAS(ペルフルオロアルキル物質)が使われているんです。PFASは以前にもお話しましたが、環境に悪いだけでなく、体内にも蓄積され、がん、ホルモン障害、肝臓・腎臓障害、発育・生殖障害、免疫系障害を引き起こす可能性があるという研究結果が多く出ています。
ヨガウエアに限らず、静電気防止、防汚、難燃、またシワにならないことを売りにしている衣類はホルムアルデヒド、テフロンなどのフッ素系化学物質、ノニルフェノールエトキシレート(NPE)、ノニルフェノール(NP)、トリクロサンなどで処理されていることが多いのです。NPEとNPは皮膚から吸収され、齧歯類では生殖・発達への影響が示されています。またトリクロサンに暴露された工場労働者の研究では、定期的な暴露が発がんリスクの上昇に寄与すると示唆されています。
衣服や皮革、繊維製品の色付けに使われるごく一般的な合成染料のアゾ染料は、皮膚の表面や腸内の細菌、肝臓などで分解され、発ガン性物質を生成する恐れがあるアゾ染料が24種類あると言われています。そして、その発がん性物質は「特定芳香族アミン」と呼ばれています。これに定期的に触れていたドイツの染料工場労働者の間で膀胱がんのリスクが増加しました。
またお家のクローゼットの中には必ずあると言われるアクリル繊維にはジメチルホルムアミドが含まれており、アメリカ疾病予防管理センター(CDC)は、皮膚に直接触れた後、”肝臓障害やその他の健康への悪影響を引き起こす可能性がある “と述べています。これらの影響により、アクリル繊維を製造する人々は、作っている衣類に触れるだけでも保護服を着用しなければならなくなったのです。
便利なものが作られれば作られるほど、環境や人体への影響が悪くなっていくというのが1つの定義として見られるような気がします。お家の中もシックハウス、お洋服も化学繊維ばかりとなるとどんなに栄養価高く、体に良いものを食べていても毒素は溜まっていくばかりかもしれません。お家の中の点検そして取り換えを、少しずつでも進めていきましょう。
参考文献
https://www.alternet.org/2017/07/toxic-fabric-our-clothes/
https://www.championhoodie.com/blog/fast-fashion-facts/
https://sewport.com/fabrics-directory/polyester-fabric
https://www.cancerincytes.org/could-our-wardrobe-contribute-to-cancer
https://www.cbc.ca/news/marketplace/toxic-clothing-1.6193866
https://www.treehugger.com/fast-fashion-environmental-ethical-issues-4869800
https://www.ehn.org/pfas-clothing-2656435785/8-brands-with-pfas-indicators