アメリカのリサイクルシステムの仕組みについてどのくらいご存知ですか? アメリカでは州また市町によって方針が違い、リサイクルできる物が異なります。なので国全体でのリサイクル法は存在しません。都会では瓶、缶、段ボールなどと仕分けするのが普通ですが、田舎に行くと生ゴミ、段ボール、瓶、缶、プラスチック製品、電化製品などなど、爆発性のあるもの意外なら何でも入れてもいい地域が存在します。
しかし都会でも町のあちこちにあるごみ箱にはなんでも入っていて、プラスチックのボトルやカップ、また袋があふれているのも光景し、リゾート地では入りきれず、落ちて道に散らばっていたりします。エレンマッカーサー財団(サーキュラー(円形)モデルの経済的潜在力を定量化し、この価値を捉えるアプローチの開発のために活動している)の調査によると毎年世界中から800万トンのプラスチックが海に流れ込み、海の健康と海洋生物に壊滅的な影響を与えていると言われています。そしてこのペースで進めば、2050年には魚よりプラスチックごみの量が多い海になることが予測されているのです。という事は私たちが大きな改革をしなければ、そのうちお魚は食べられなくなるという事で、それは海だけでなく、全体的な大きな環境破壊へとつながります。
今回のニュースレターでは海洋生物のみでなく、生物全部を破壊しようとしているマイクロプラスチックについてお話したいと思います。皆さんの中には昨年10月に発表された世界の食塩の9割にマイクロプラスチックが含まれているというショッキングな報告をご存知の方もいるかと思います。マイクロプラスチックは,大きさが5 mmより小さなプラスチック片です。マイクロプラスチックは,その起源から大きく2つのグループに別けられ、1つは,製造された時点ですでに5 mm以下の小さなプラスチックで1次マイクロプラスチックと呼ばれます。もう1つは,プラスチック製品が劣化して小さくバラバラになったもので2次マイクロプラスチックと呼ばれます。
1次マイクロプラスチックに含まれるのが、マイクロビーズ。洗顔料や歯磨き粉,ボディシャンプーなどのケア商品には,角質や汚れを落とすためにプラスチック製のマイクロビーズが使われています。その次に含まれるのがプラスチック製の釣り糸や漁網・ロープ、またフリースなどの化学繊維の服を洗濯・乾燥した際に発生する繊維クズ(ファイバー)などのマクロプラスチックファイバーです。最後に含まれるのが、樹脂ペレット(レジンペレット)。樹脂ペレットとは,プラスチック製品を成型・加工する際に使う中間原料で、ものすごい数の樹脂ペレットがプラ製品の製造に使われています。アメリカではおよそ270億キログラムの樹脂ペレットが毎年生産され、プラスチック製品の製造や輸送中にこぼれ,漏れ出し,雨風に飛ばされ流され最後は海にたどり着きます。そしてマイクロプラスチックの中で最も多いのが2次マイクロプラスチックの劣化したプラスチックです。海を漂流するプラスチックごみの多くは,長い間,太陽の紫外線にあたり,高温にさらされ,光分解と熱酸化分解によって少しずつ劣化して脆くなり、物理的な摩耗によって砕けて小さくなっていきます。
お塩にマイクロプラスチックが含まれているということは私たちは普段からこの小さなプラスチックを食べている可能性が高いですね!この昨年10月に発表された上記の研究では平均的な成人が食塩を通して1年間に摂取するマイクロプラスチックは約2000個だと推定しています。また同じく昨年10月に欧州消化器病学会で、オーストリア、ウィーン医科大学の胃腸病学者であるフィリップ・シュワブル氏により備的研究に協力した8人(内1人は日本人)の糞便からマイクロプラスチックが確認されたと発表されました。彼らは1週間にわたり食事の記録を取った後、糞便のサンプルを提出しました。そして全員から大きさが0.05~0.5ミリのマイクロプラスチックが見つかり、便10グラム当たり平均20個が検出されました。ピンポイントでどこからプラスチックが入ってきたのかは残念ながら断定できませんが、毎日ガムをかんでいたり、海産物を食べていたり、プラスチックの包装材に入っていた食べ物を口にしていたり、また毎日平均約740mlの水をPETボトルから飲んでいたと報告されています。
では体への害はどうなのか?現実的にプラスチックを食べてもらって人体実験をすることはできないので、他の研究からしか予測できないのが現状です。糞便からプラスチックが発見されたんだから、そのまま体の中を素通りするのではと思う方もいるかもしれませんが、数百万分の1ミリという非常に小さな粒子であるナノプラスチックが存在するのです。昨年8月に発表された「海洋生物中のマイクロプラスチックと人間の健康への影響」という化学論文では次のようにナノプラスチックについて書かれています。「マイクロおよびナノプラスチックの潜在的な健康上のリスクは、人工ナノ粒子のものと同様に評価できます。経口暴露後、ナノプラスチックは粘膜の特殊な上皮細胞であるM細胞によって腸から血液に運ばれ、そこでリンパ系を通って肝臓と胆嚢に運ばれます。経口爆露からのナノ粒子全身分布は多数の影響があることが示されています。例えば心肺反応、内因性代謝産物の変化、遺伝毒性、炎症反応、酸化ストレス、栄養吸収への影響、腸内細菌叢、生殖などです。」
またプラスチックにはさまざまな形があり、いろいろな機能を付け加えるために『添加剤』が加えられています。添加剤には,安定剤,可塑剤(かそざい:やわらかくするために使う),難燃剤,帯電防止剤,紫外線吸収剤など様々な種類があり、これらの添加剤は,その分解産物もあわせて人体に有害な物質が多く含まれています。ビスフェノールA(BPA)や可塑剤として使われるフタル酸系の添加剤は,低濃度でも発がん性や生殖機能を損なわせる内分泌攪乱作用が動物実験で確かめられています。また難燃剤につかわれるPBDEs(ポリ臭化ジフェニルエーテル)は甲状腺攪乱作用や神経毒性があり,有害な残留性有機汚染物質(POPs)の1つとしてよく知られています。可塑剤として使われるフタル酸ビス(2-エチルヘキシル)(DEHP)やフタル酸ジイソノニル(DINP)は急性毒性があることが確認されています。そして昨年12月の小児科JAMA(アメリカ医師会ジャーナル)ではプラスチックのフタル酸エステルと子供の言語の遅れは関連している可能性があると発表されたのです。
現在私たちが直面している慢性疾患がマイクロプラスチックの環境汚染によるものだと証明することは大変難しいですが、全くないと言い切れるのでしょうか?私たちはこれ以上の環境破壊そして人類の健康の為にマイクロプラスチックを減らさなくてはいけません。その為にはまず、プラスチックの使用を極力なくすことです。私たちの生活はプラスチック製品だらけですから、簡単に使用をやめることは難しいですが、私たち一人一人が責任を持ってできることを始めるべきではないでしょうか?例えば
- レジ袋をエコバッグに代える
- 洗剤やミルクなど、プラスチック容器に入っているものではなく、箱に入っているものを買う。
- コメ、パスタ、豆などの乾物はパッケージに入っているものではなく、量り売りしているものを選ぶ
- ランチは買わずに手作り弁当をプラスチック素材でない、竹や木、またステンレス素材のお弁当箱を使用する。
- 家でもプラスチックの食器や容器を使わない
そして本当に近い将来に聡明なエンジニアがプラスチックに代わる持続可能な環境にやさしい製品を発明することを望んでいます。
参考文献
クリックしてEllenMacArthurFoundation_TheNewPlasticsEconomy_15-3-16.pdfにアクセス
https://www.azocleantech.com/article.aspx?ArticleID=785</
https://www.nationalgeographic.com/environment/2018/10/news-plastics-microplastics-human-feces/
https://www.nationalgeographic.com/magazine/2018/06/plastic-planet-health-pollution-waste-microplastics/
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC6132564/
マイクロプラスチック…怖いですね”(-“”-)”
怖いです!