バランスの取れた腸内細菌叢を作ることについて何度も話してきたので、腸内細菌叢が健康にとって重要なカギであることはもう皆さんご存知ですよね。でも慢性疾患を持つ多くの患者さんは腸内環境との関係など全く考えません。便秘や下痢、またお腹が張る感じがあって、ゲップやガスがでるなどの症状が「そういえば?」という回数ぐらいしかなかったら、腸内環境が悪化しているとは思わないかもしれません。またこのような消化器官系の症状が気づくほど現れないけれど、慢性片頭痛、季節性アレルギーまたは喘息、PMSやPCOSなどのホルモンの不均衡、うつ病、ニキビ、湿疹、アトピー、カンジダ、食物アレルギーや食物過敏症、免疫システムの低下、関節痛などの症状を持っている人が腸との関係を調べようとしないのが普通かもしれません。
でもこのような症状をうったえる人の多くがリーキーガット症候群(腸管壁浸漏)であったりするのです。日本でもこのリーキーガット症候群という名前があちこちで聞かれるようになりましたが、ご存知でない方もいると思うので、簡単に説明しますね。
読んで字のごとく、腸の粘膜に穴が空き、異物(菌・ウイルス・たんぱく質)が血中に漏れだす状態です。本来、腸は食べたものから栄養を吸収し、身体のために免疫力を維持したり、ビタミン・ホルモンを作る働きをしていますが、異物が血中に漏れると身体のいたるところで炎症を起こし、免疫システムに大きな負担がかかるのです。また痛みや発熱をすぐに起こさず、じわじわと時間をかけて身体に障害を与えます。
リーキーガット症候群は聞いたことあるけれど、消化器系に症状がある人だけがなるものと思いがちですが、その症状は人によって様々で、ハッキリとでないことも多いのです。なので健康そうにみえる人でも見えないところでじわじわと悪化していることがよくあります。上記に挙げたような慢性疾患に悩ませれているのであればリーキーガット症候群があると多くの専門家は断言しています。
前回お話したMTHFR遺伝子異変を持つ人はリーキーガット症候群からもっと深刻な健康障害になりやすいと自然療法医であるドニエル・ウィルソン医師は述べています。これはSAMeといわれる生細胞における重要な機能を調節する生体内に存在する化学物質が腸の内側を覆う新しい健康な細胞を作るために必要なんですが、MTHFR遺伝子にある人はこのSAMeを十分に作ることができないからと説明しています。
特になにも感じないからまさか自分の腸に穴があいて病原菌や未消化のタンパクが流れでているとは思わないと思います。でも風邪を引きやすかったり、回復が遅い、元気がない、アレルギー反応として食物への過敏症が出てきたなどの変化がみられるのであれば、食事と生活習慣を見直す時です。そのまま何も変えないでいると半年後または何年後かに下記のような深刻な疾患をうったえることになるかもしれません。
不妊症
1型糖尿病
多発性硬化症
慢性関節リウマチ
膠原病
白斑病
ナルコレプシー
精神分裂症
自閉症
うつ病
ハンチントン病
非ホジキンリンパ腫
甲状腺機能低下症
ポルフィリン症
リーキーガット症候群を調べる検査はあります。しかしアメリカでも日本でも健康保険が効かないので、手軽にというわけにはいきません。またアメリカでは州毎に法律がちがうので、検査を受けられる州と受けられない州があります。因みにNY州ではできません。別の州に行くか、別の州の住所を借りて受けるしか方法はありません。なので、「もしかしたら?」と思うのであれば、まず食生活の改善から初めてください。加工食品を止め、精製された穀物・砂糖をやめ、お酒を控え、栄養価の高い食品を取ることです。中には食生活は改善したけど、症状は無くならないという人もいるかと思います。その場合はさらに次の状態に悪化しているので、もっと制限された特定炭水化物ダイエット(SCD)、炭水化物を制限する食事療法(GASP)、パレオダイエット、免疫疾患パレオ、またウェストン・プライスダイエットなどを試すことになるでしょう。また抗酸化物質、粘膜栄養素、消化酵素、プロバイオティクス、および食物繊維などのサプリメントが必要になり、生活習慣も変えていかなくてはなりません。確かに時間もかかり、制限が多い治療法かもしれませんが、通常の医療では治すことはできないと認識してください。なので早期のうちに改善を!
下記は英語のサイトですが、リーキーガット症候群の治療法について説明のあるサイトをいくつか選びました。私のこのサイトではアドバイスはできませんので、情報として読んでみてください。
参考資料
https://www.geneticlifehacks.com/high-histamine-and-methylation-mthfr-defects/
https://doctordoni.com/2017/10/leaky-gut-mthfr-and-how-to-fix-it/
https://ndnr.com/gastrointestinal/leaky-gut-is-there-a-test-for-that/