糖尿病患者にとって脂質は良いの?悪いの?

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糖尿病患者は世界的に増え続け、有効な対策をしなければ、2025年までに世界の糖尿病人口は7億人以上に増えると世界保健機関(WHO)は予測しています。アメリカでは人口の約9.4%の3千30万人が糖尿病患者と推測され(2015年)、日本では平成28年の国民健康・栄養調査では1千万人と推計されました。日本でもアメリカと同じぐらいの割合で糖尿病を持つ人がいるということになりますね。そして糖尿病で最も怖いのはその合併症です。糖尿病の慢性合併症には「糖尿病性網膜症」「糖尿病性腎症」「糖尿病性神経障害」の三大合併症を含む細小血管障害と、「心筋梗塞」「脳卒中」などの大血管障害などがあり、それそれの症状に伴い別途お薬を処方してもらって飲んでいるという方が多いのが現状です。

しかしそんな中2型の糖尿病を薬ではなく、食生活と生活習慣の改善で完治したという人は少なくありません。ネットで検索すればサクセスストーリーがでてくると思います。検索していくと様々なダイエット法があり、今アメリカでは低糖高脂と抵脂肪のビーガン食という全く対立したダイエットが糖尿病克服に使われています。 低糖高脂ダイエット(ケトジェニックダイエット)は三大栄養素の割合が脂質60-75%、タンパク質15-30%、炭水化物(糖質)5-10%というのを目標としています。なので穀物系の物は一切食べず、糖質は野菜からのみとなり、脂質を多くとるので、お肉にバターをたっぷりつけたり、ベーコンやチーズを食するのが多くなります。一方低脂肪のビーガン食は肉、魚、卵、乳製品を全く取らず、脂質を極力控えて野菜、穀物系、豆類、果物を中心の食事をとります。

米や麺などを食べると血液中の糖質が急激に増え、すい臓からインスリンというホルモンが出て糖質を取り込みます。しかし糖尿病がある場合、インスリンが少なく、取り込みきれません。残った糖質は周りの細胞を傷つけ、動脈硬化や失明などのリスクを高めます。そこで食事の糖質を減らす低糖高脂ダイエットを行うことで、血液中の糖質の急激な増加を防ぎ、少ないインスリンでも糖質が残りにくくするというのが低糖高脂ダイエット派の意見です。しかし、低脂肪のビーガン食派は脂質の取り過ぎが糖尿病の原因だと主張しています。カロリーの15%以上を脂肪として摂取すると、余分な脂肪を筋肉、肝臓、すい臓、胆嚢などの他の組織に保存し始めます。これらの器官組織が脂肪で満たされると、細胞に十分なエネルギー(脂肪として)があるので、グルコース(別のエネルギー源)が細胞に入る(インスリン受容体を遮断する)インスリンの能力をブロックする。 したがって、インスリン抵抗性*のために高血糖を引き起こすという考えが低脂肪のビーガン食派の意見です。インスリン抵抗性が糖尿病の引き金になっているというのは世界共通です。このインスリン抵抗性についてはこのコラムの下に纏めてみました。

この2つの相反するダイエットについては沢山の研究論文及びその背景についての説明がネットで探せますが、ここでは両者のポイントだけ纏めました。このように相反するダイエットが2型糖尿病の完治に役立つと言われると本当に混乱しますよね。特にこれから食生活を変えて糖尿病を克服したいと考えている方には。私はこの両者の意見はもっともだと思います。しかし身体がどのように反応するかは各個人のバイオマーカーに寄るので、個人個人違うと思っています。ただここで強調したいのは、両者とも揚げ物、ファーストフード、インスタント食品、加工食品などのジャンクは推奨していないということです。あくまでも素材そのものを食することを基本としています。ですから低糖高脂ダイエットですと、日本でもよく見られる市販の低糖パンや低糖麺、ましてや低糖カップ麺などは邪道と言えます。低脂肪のビーガン食でもビーガンバーガーやビーガンチーズなどの加工食品が沢山ありますが、これもNOです。そして両者とも緑の葉野菜やアブラナ科のブロッコリー、カリフラワー、キャベツなどをちゃんと摂取します。

脂質を沢山取る食事がいいのかか、脂質を全くとらない食事が良いのかは挑戦してみないとわかりません。私のようなカウンセラーや、医者、栄養士などの専門家のヘルプ無しで試みるのであれば、細かいところまで本を読み、本に書いてある献立やプラン通りのやり方で行ってください。そうでないと両者が主張する効果が現れません。食生活の改善での成功へのカギはそのダイエットを一生続けられるかです。低糖高脂ダイエットまたは低脂肪のビーガン食のどちらかのダイエットをしてヘモグロビンA1Cの数値が正常にもどり、糖尿病やその他の薬を止めることができたとたん元の食生活に戻ってしまい、さらに酷い糖尿病及びその合併症に悩まされるということもよくあります。

したがって、健康改善および増進をする真の動機と目的意識を持ち続けることが長期的な成功への決めてとなることを明確に刻んでくださいね。そして是非成功させてください!

 

<インスリン抵抗性>

インスリンは、膵臓と呼ばれる器官から分泌されるホルモンです。その主な役割は、血流に循環する栄養素の量を規制することです。インスリンは、主に血糖管理に関係していますが、脂肪やタンパク質の代謝にも影響します。炭水化物を含む食事を食べると、血流の血糖値が上昇します。 これは膵臓のβ細胞によって感知され、インスリンが血液中に放出されます。血糖が全身の臓器にとどくと、インスリンの働きによって臓器は血糖をとり込んでエネルギーとして利用したり、たくわえたり、さらにタンパク質の合成や細胞の増殖を促したりするのです。こうして、食後に増加した血糖はインスリンによって速やかに処理され一定量に保たれるのです。

しかし、何らかの原因で、インスリンが作用しても肝臓、筋肉、脂肪細胞などがインスリンに応答しなくなり、充分に血糖を取り込めなくなった状態が、インスリン抵抗性と言われます。通常であれば10のインスリンは血糖値を10下げる作用があるのですが、インスリン抵抗性が高くなると10のインスリンは血糖値を5しか下げなくなってしまいます。そうすると、膵臓は血糖値を下げようとインスリンを倍の量(この場合20)分泌するようになります。この状態を放っておくと膵臓はやがて疲れてインスリンを分泌できなくなってしまうのです。そして高血糖が続き、2型糖尿病になると言われています。 インスリン抵抗性は過食、運動不足、肥満、加齢、ストレスによるものではないかと言われています。また最近では慶応義塾大学医学部の内科学チームが高脂肪食の過剰摂取に伴う大腸の慢性炎症が、「インスリン抵抗性」を引き起こし、糖尿病の発症につながる事を発表しました。アジア人はもともとの体の仕組みとして、欧米人よりインスリンを分泌する量が少ないと言われており、やせ型でも内臓脂肪型肥満であったり、運動不足だと、必要なインスリンは通常の数倍にもなることから、アジア人は軽度の肥満でも糖尿病になりやすい民族だと言われています。

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