先日化学者のデビッド・ダイケマン博士の「1型糖尿病の合併症を回避する方法」というプレゼンテーションを見ていて、血糖値の少しの上昇が健常者でも心臓病、ガン、肝臓病、脳卒中、そして膵臓β細胞などへの影響があるということを知り大変驚きました。
そこで色々と調べてみると、ある調査ではHbA1cの値が5.5%以上そして空腹時血糖値が104mg/dl以上になると網膜症(糖尿病の合併症として起きてくる目の病気です。緑内障とともに成人してからの失明の大きな原因疾患となっています)になる率が急増すると述べています。
イタリアの研究員チームが血糖値の正常なグループを対象に膵臓β細胞の反応を調べたところ、ブドウ糖負荷試験(OGTT)2時間後の数値が100mg/dlを少し超えただけで、すでに膵臓β細胞の機能不全が始まることを発見しました。膵臓β細胞は、細胞内グルコース代謝を介してインスリン分泌を制御している細胞です。また別の研究ではHbA1c が4.6%の値から心臓病のリスクが始まると発表されています。これは血糖値の値だと86mg/dlを示します。
読者の方には上記の数値がどのような意味を持つのかご存知ない方もいらっしゃると思うので、下記に米国糖尿病協会が取り決めている各数値を表示しました。2012年4月から日本ではHbA1Cの値を日本独自のJDSという基準測定から世界基準のNGSP基準に変更されましたが、ブドウ糖負荷試験以外は若干日本の方が緩い感じです。この表からわかるように上記に述べた研究発表によると血糖値が「正常」と言われる範囲の時点で「異常」は始まっていくのです。
(各検査内容を知りたい方はページの終わりに脚注として説明してありますので、お読みください。)
多くの人が自分のコレステロール値をわかっているのに、血糖値については知らないということがよくあります。機能的(及び代替など)医療専門家は血糖値の変動に気を付けることが健康で長生きするために最も信頼できる指標だとのべています。
血糖値が正常値の範囲内ですと、大抵のお医者さんは特に注意をしてお話しをしたりしませんが、糖尿病管理についてはパイオニアでもある、バーンスタイン医師によると早朝空腹時血糖値、食事前、そして食後2時間後の血糖値は83 mg/dl (HbA1cは4.8%)を保つことが糖尿病の人だけでなく、一般の人達にも必要であると述べています。
あなたの血糖値はいくつでしょうか?
掛かりつけの医者に毎月通って血糖値を調べてもらうというのは現実的ではありませんね。最も簡単でかつ安上がりに血糖値を調べる方法があります。それは市販の血糖値測定器を使うことです。アメリカですと20ドルぐらいでオンラインや薬局で買えます。日本では5千円ぐらいからあるようです。英語ですが、機能的医療では著名なクリス・クレッサー医師のサイトに検査の仕方を説明していますので、是非参考にしてください。
誰がなんと言おうとも、血糖値が目標値を超えるようであればその食べ物は日頃の食生活から外すべきです。インシュリンが沢山でているのか知ることによって食生活そして生活習慣を調整し、将来的おこるかもしれない深刻な健康問題を回避できるようになります。血糖値測定器を使うことにより「あなた」に合った食生活を見つけることができ、健康を取り戻すことができるでしょう!
脚注:
血糖値測定法は主に3種類あります。
HbA1c(ヘモグロビン・エイワンシー):高血糖状態が長期間続くと、血管内の余分なブドウ糖は体内の蛋白と結合します。この際、赤血球の蛋白であるヘモグロビン(Hb)とブドウ糖が結合したものがグリコヘモグロビンです。このグリコヘモグロビンには何種類かあり、糖尿病と密接な関係を有するものが、HbA1cです。ヘモグロビンは赤血球の中に大量に存在する蛋白で、身体の隅々まで酸素を運搬する役割を担っております。赤血球の寿命はおよそ120日(4ヶ月)といわれています。赤血球はこの間ずっと体内を巡って、血管内のブドウ糖と少しずつ結びつきます。高血糖すなわち余っている糖が多ければ多いほど結びつきが増えグリコヘモグロビン(HbA1c)も多くなるわけです。したがって血液中のHbA1c値は、赤血球の寿命の半分くらいにあたる時期の血糖値の平均を反映します。すなわち外来で血液検査をすると、その日から1~2ヶ月前の血糖の状態を推定できることになります。
早朝空腹時血糖値:前日の夕食後から絶食し、朝一番に空腹の状態で採血して、自動分析器にかけて測定します。血糖値は採取する血液によっても異なります。医療機関で検査する場合は静脈血を使いますが、動脈や毛細血管での血糖値は静脈よりも10~20mg/dl高くなります。したがって、糖尿病の人が自己血糖管理に用いる簡易血糖測定器で血糖値を測る(血糖自己測定=SMBG)場合は、医療機関の数値よりも高値になることを頭に入れておきましょう。
経口ブドウ糖負荷試験(けいこうブドウとうふかしけん、Oral glucose tolerance test, OGTT):前日の夕食後から絶食し、朝一番に空腹の状態の時に75グラムのブドウ糖水溶液を飲んでもらい、2時間後に採血を行い、血糖値を測定する検査です。炭水化物の多い食物を摂取した後に健常者よりも血糖値が上昇し、糖質を摂取する前の血糖値に戻るのが遅れます。これを耐糖能の低下といいます。また、血液中のインスリン濃度を測定することで、ブドウ糖に反応してインスリンが出ているか、インスリンの量は出ているかということを調べることができます。
参考資料:
- https://www.dietdoctor.com/avoid-complications-type-1-diabetes
- http://care.diabetesjournals.org/content/32/11/2027.abstract
- http://link.springer.com/article/10.1007%2Fs00125-003-1263-9?LI=true
- https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/16157837?dopt=Abstract
- http://www.diabetes.org/diabetes-basics/diagnosis/
- http://www.diabetes-book.com/