体には2つの種類の脂肪があります。1つは皮下脂肪。これはつまめるし、プルプルとゆれ、段がつき、セルライトになります。そしてもうひとつは内臓脂肪。読んで字のごとく肝臓や心臓という臓器の周りにくっついているのです。内臓脂肪がどんなに怖いかは日本で色々なテレビ番組や本などでとりあげられていますが、これはメタボに関係するとよくいわれますね。しかし、内臓脂肪は卵巣がんの拡大と成長を促進する可能性があるとシカゴ大学の産婦人科教授であるエルンスト・レンジェル氏は研究の結果を述べています。また同氏は「がん細胞は内臓脂肪をえさしにして大きくなっていく、しかし、太ってない女性でも卵巣がんになるのだから単なる肥満とは必ずしも関係があるとは限りません。」と付け加えています。
肝臓がんの原因としてアルコールの摂取などが影響していると言われていますが、今ではアルコールを摂取しない人も肝臓がんになっています。これは肝臓に脂肪が蓄積され、脂肪肝となり肝臓がんへと進んでしまうケースです。また、乳がんや子宮がんなどは女性ホルモンのエストロゲンが関係していると言われていますが、エストロゲンは卵巣ではなく脂肪細胞でも作られ、内臓脂肪の蓄積でエストロゲン値が上がり、がんのリスクが高まると言われています。
しかし内臓脂肪の蓄積同様に怖いのがサルコペニア肥満です。日本のテレビでも沢山取り上げられました。加齢により筋肉が衰え脂肪が蓄積する状態で、「高血圧になるリスクは女性で2.3倍、糖尿病につながる危険因子の値は19倍、さらに骨折や転倒、寝たきりになるリスクも格段に高まります」とサルコペニア肥満研究の第一人者で筑波大学大学院教授の久野譜也(くのしんや)氏は述べています。
メタボは内臓脂肪肥満に、高血圧や高血糖、脂質代謝異常のうち2つを持っている人を指しますが、サルコペニア肥満はそれに筋肉の減少が加わるので高血圧の危険度(リスク)が2倍に上昇し、放置すれば生活習慣病を発症するようになるという。
筋肉はどれだけ老化が進んでいるのかを測るバイオマーカーの1つです。筋肉は脂肪を燃やし、骨を守り、体を動かし、転倒を防ぎ、エネルギーを蓄え、体の形を整えます。なので筋肉が減るというのは老化を進め、慢性疾患を引き起こし、機能を低下させ、体が弱くなり、活力がなくなります。サルコペニア肥満は単なる筋肉喪失ではなく、神経系、靭帯、関節、循環器官、骨の健康など、体全体に影響を及ぼすとヘルス・シナジーのオーナー、ロバート・リドパス氏は主張します。
人は25歳を過ぎた頃から筋肉量が年に0.5-1%の割合で減っていき、40歳を過ぎると1-1.5%とあがっていきます。失われた筋肉は脂肪に変わっていき、そのままなにもしないで放置しておくとサルコペニア肥満になってしまうのです。(誰でもなる可能性があるということ!)これは体重は変わらず見た目も細身の人にも多く発生しています。
通常サルコペニア肥満は怪我や事故でよく動けなくなったお年寄りに見られるといいますが、同じような状況にいる若者にも現れています。最近では体の代謝のプロセスを変えてしまうような強い鬱病の薬をのんでいる若者も増え、彼らも薬によって不活発になりサルコペニア肥満になるケースが発生しています。
しかし、今では薬も飲まず怪我もしていない正常な若者がサルコペニア肥満になってしまうのです。それは座りぱなしのデスクワーク、運動もせず家に帰ってもテレビまたはコンピューターの前に座っている生活を送っているからなのです。そして気をつけなくてはいけないのが食事制限のダイエットを繰り返している人。体重ばかりを気にして運動をせず、食事を減らすだけのダイエットは筋肉量が極端にへり体脂肪率は上昇して将来のサルコぺニア肥満体質を作ってしまうのです。筋肉量が減るということは新陳代謝も減り、ダイエットをやめたとたんリバウンドし、それを繰り返していくと痩せ難い体をつくり筋肉が少なく脂肪の多いからだとなってしまいます。
サルコぺニア肥満は体重計にのってわかるものではなく、見た目にも発見しにくいので、久野譜也氏によると筋肉率が男性の場合27.3%、女性で22%以下の人は要注意だそうです。筋肉率は、市販の体組成計で計ることができます。骨格筋の筋肉率ではなく、筋肉量(骨格筋と平滑筋と水分量を含んだ値)を測定するものもありますので、ご確認下さい。また自分で簡単に筋力の低下をチェックする方法も久野譜也氏が紹介しています。(1)片足立ちで靴下がはけるかどうか、(2)いすに座り、片足で立てるかどうか、(3)片足立ちで60秒キープできるかどうか。1つでも当てはまる場合は、下半身の筋力が低下している可能性があります。
デスクワークの仕事をし、車で通勤、その上運動をせず食事制限をしていると慢性疾患を引き起こし、怪我をしやすくなり、やがては若くして寝たきりになってしまう可能性があります。なのでこのような状況にいる人は今日からすぐに改善しましょう。
下記は体脂肪率の写真ですが、今年あなたはどの数字を目指しますか?